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コラム一覧

2022/10/26

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Auther :アステル

自転車のヘルメット着用努力義務化と交通事故

1 はじめに

「自転車を運転する際に乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない」というヘルメット着用の努力義務を定めた改正道路交通法が令和4年4月27日に公布され、1年以内に施行されることとなりました。
そして、熊本市では、この改正道路交通法の施行に先んじて、令和4年10月1日より自転車利用の際のヘルメット着用を努力義務とする条例が施行されています。
今回の法改正、条例施行は、自転車が被害者となる交通事故にどのように影響があるでしょうか。

 

2 致死率の低下

まず、なにより、自転車用ヘルメットの着用によって、自転車乗車中の交通事故に占める死亡事故の件数ないし割合の減少が期待されます。
警察庁は、自転車乗車中の交通事故で亡くなられた方の約6割の方の致命傷が頭部にあること、ヘルメットの着用の有無で致死率に2倍以上の差がついていると報告しています。(警察庁のウェブページ:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html
実際に交通事故事件を取り扱っていると、頭がい骨骨折、脳内出血などの頭部外傷が、死亡の原因となっている案件に接することがあります。また、頭部外傷によって、高次脳機能障害などの重度の障害が残存することも多くなります。ご自分の命や大切な方の命、健康な体での生活を守るために自ら適切な対応をすることは必要でしょう。
とはいえ、ヘルメットの着用のみで死亡事故や重度障害を予防することはできません。傘さし運転やスマホ操作などのながら運転をしない、夜間のライトや反射材の利用、交差点や見通しの悪い場所での一時停止、徐行など、日ごろの安全運転ももちろん大切です。

 

3 未着用時に賠償額の減額はあるか

ヘルメットの着用は「努めなければならない」という「努力義務」とされており、着用していなかったからといって、道交法違反として罰則等を受けるわけではありません。
では、自転車運転者がヘルメットを着用していなかったことで、頭部に重大な外傷を負ってしまったような場合に、自転車運転者側の落ち度として交通事故賠償金が減額されることがあるでしょうか。
バイクや原付を運転する際にヘルメットを着用していなかったり、自動車に乗車する際にシートベルトを着用していなかった場合、交通事故賠償では賠償額が減額されることがあります。これは、交通事故によって生じた損害が拡大してしまった原因が被害者側にもあるとして減額されるものです。
今回、自転車運転者のヘルメット着用義務は努力義務にとどまりますが、今後の社会内への浸透状況や、発生した事故の自転車側の運転態様などによっては事故賠償金が減額される可能性は十分あると思います。

 

4 今後の対応

ヘルメットを着用しないと、賠償金額が必ず減額されると言い切れるわけではありませんが、ご自分やお子様などの生命、身体を守ることができるというヘルメット着用によるメリットはかなり大きなものです。
ちなみに、私は弁護士になって以来、通勤にマウンテンバイクを利用していますが、必ずヘルメットを着用するようにしています。
自転車は、基本的に車道の左端を走行し、車道を走行する自動車ととても近い場所を走ることになります。スポーツサイクルだけでなく、シティサイクルを利用する場合でもヘルメットを着用するようにしましょう。

 

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【自転車事故に関するコラム】

 

2022/09/21

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Auther :アステル

警察の事故処理、人身事故にすべき?物損事故のままでいい?

 

はじめに

「人身事故にするか、物損事故にするか決めなければならないが、どう違うのか、どうする方が自分に有利なのか分からない」というご相談をよくお受けします。

結論からいえば、人身事故か物損事故かは、刑事手続上の違いですので、物損事故にしたから損害賠償額が下がるということはありません。

 

「人身事故」にするってどういうこと?

人身事故扱いの場合、交通事故を発生させた者を起訴するかどうか、すなわち、過失運転致傷罪等が成立するものとして刑事手続による処罰を求めるかどうか、起訴するとしてどのような処罰を求めるか等を判断するため、警察や検察が捜査や取り調べを行うことになります。

もっとも、実務上、実際に起訴されるのは、被害者に死亡・重度障害等の重篤な結果が発生した場合、無免許や無謀・危険な運転をしていた場合、交通事故を過去にも繰り返し起こしている場合等、一定の場合に限られています。

 

大きなポイント・実況見分調書が作成されるか否か

人身事故扱いの場合、警察が交通事故現場で実況見分を行い、現場の様子や事故の状況に関する双方当事者の説明等について、実況見分調書を作成します。事故態様や過失割合についての主張が異なる場合等は、民事上の示談交渉や裁判手続において、実況見分調書が利用できることがあります。

 

賠償を受けられるかどうかには影響はない

以上のとおり、人身事故にするか否かで、民事上の損害賠償義務の内容や金額が変わることはありません。大怪我を負ったわけではないから、実況見分に立ち会わなければならないのが面倒だから、人身事故にすると相手方がかわいそうだから、といった理由で物損事故として進める方もいらっしゃいます。

もっとも、前述のとおり、民事上実況見分調書を作成しておく方が望ましいケースもありますので、お悩みの際はアステル法律事務所へご相談ください。

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【交通事故一般に関するコラム】

2022/06/29

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Auther :アステル

相手方が「無保険」だった場合はどのように対応したらよい?

日頃、交通事故相談を受ける中で、一定の割合で「相手方が無保険だったがどうしたらよいか」というご相談をお受けします。
今回は、「相手方が無保険だった」場合にどのような手段を使うべきか、そのタイミングはどうするべきかの概略をお伝えします。

 

1 「相手方が無保険だった」の意味

自動車を利用する場合に加入する保険としては、加入が強制される自動車賠償責任保険(自賠責保険)と、これとは別に加入する損害賠償保険(任意保険)があります。
「相手方が無保険だった」というのは、この任意保険に加入していない場合を指します。

 

2 任意保険の役割

任意保険は、加害者が負担することとなる法的な賠償責任に対応するために加入するものになります。
「対物賠償無制限」、「対人賠償無制限」などということばを聞いたことがあるかと思いますが、これらは、加害者となった時に「物的損害の賠償責任を無制限に損害保険で対応できる」、「人身損害の賠償責任を無制限に損害保険で対応できる」という意味です。
つまり、任意保険に加入していない場合は、いくら相手方に損害賠償責任があったとしても、対応できる保険がないため、相手方本人に請求するしかない、ということになります。

 

3 自賠責保険の役割

任意保険に加入していないとしても、自賠責保険には加入しているので、自賠責保険には一定の損害補償を請求することが可能です。
ただし、自賠責保険が対応しているのは、「人身損害」に限られますし、対応できる金額も一定程度に限られます。これは、自賠責保険が「交通事故によって生じるケガなどの最低限度の補償」を目的としているからです。
つまり、自賠責保険は、①物的損害に関する賠償責任には対応しませんし、②人身損害のうち自賠責保険で対応してもらえる上限金額以上の賠償責任は対応しないことになります。

 

4 相手方が無保険だった場合の対応方法(物的損害編)

⑴ 相手方無保険のリスク

物的損害については、相手方が無保険である場合は、相手方本人に請求するほかありません。
しかも、任意保険会社も関与することがないため、相手方に請求するとなると、①物的損害の金額を確定すること、②実際に相手に支払ってもらうことの2点に支障があることが多くあります。

①については、修理工場で概算見積書を出してもらい、相手方がこの修理見積で応じる場合はスムーズに損害金額を確定できますが、実際のところ、相手方が「別の工場でも見てもらう」とか「自分の知り合いの工場で対応してもらいたい」などという場合があり、損害確定が難航するケースが多々あります。

そして、より大変なのが②相手に支払ってもらうことです。相手方と、損害賠償の内容を合意したとしても、修理代金を分割でしか支払いができない場合などもあるため、結局、被害者側が一度工場に修理代金を支払わなければならないケースが多くあります。

残念ながら、これらのリスクは、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼したからといってクリアできるものではありません。

 

⑵ 車両保険の活用

このような場合に被害者側が利用を検討したいのが、「自分が加入している自動車保険(車両保険)」の活用です。
自分の加入している車両保険を利用することで、一旦、加入している保険会社から物的損害分の支払いを受け、相手方への請求を保険会社が肩代わりしてくれます。
ただ、車両保険を利用する場合は、事故による保険等級の変更があるため、支払う保険料金に変動があります(いわゆる「無過失特約」に加入し、この適用が受けられる場合には等級変動はありません。ご加入の保険会社、代理店の担当者にご確認ください。)。
相手方本人に請求するとなると、時間と労力が多くかかります。保険等級に変更はありますが、すぐに保険会社から一定の補償を受けることができるため、例えば全損で早急な買い替えが必要な場合には車両保険を積極的に活用すべきでしょう。

 

5 相手方が無保険だった場合の対応方法(人身損害編)

⑴ 相手が対応してくれないリスク

保険に入っているか否かに関わらず、相手方本人が損害賠償を了承し、治療費の支払いなどに応じてくれる場合には、その都度、治療費等を連絡して対応してもらうことも可能です。
まずは、相手方本人とケガの状況や治療方法、治療費の支払い等をきちんと話し合うことが必要です。
ただし、相手方がこれに応じない場合が多々あります。

 

⑵ 自賠責保険は使える??

相手方本人が対応してくれない場合、相手方が無保険だったとしても、ケガ等の人身損害については、自賠責保険による補償が受けられます。
ただし、自賠責保険は、基本的に治療が終了し、損害内容が確定してから各資料を添付して申請することとなりますので、結局、一旦ご本人による立て替えが必要になります。
仮払制度はありますが、休業などが必要となって日頃の収入が途絶えてしまう場合には十分ではありません。
自賠責保険への請求だけでは困ってしまうというのが実情でしょう。

 

⑶ 労災保険利用の可能性

例えば、業務中や通退勤時の交通事故であれば、労災保険を利用することができます。
労災保険の場合、治療費等は労災保険が直接医療機関に支払ってもらえますし、休業についても一定の補償がなされます。
相手方が無保険の場合は、労災保険の利用を検討するべきです。
ただし、休業損害の全部に対応しているわけでもありませんし、慰謝料については労災では支払われないので、労災保険からの支払いに加え、相手方に不足額を請求していくことになります。また、労災保険の申請から、労災保険の認定までに時間がかかることも頭に入れておく必要があります。

 

⑷ 人身傷害補償特約(保険)の利用

労災保険は、使える場面が限られているほか、補償できる損害内容も限られています。
どんな交通事故の状況でも利用でき、かつ損害費目の全てに対応できるのが、ご自分が加入している自動車保険に付随する「人身傷害補償特約」です。これは、相手方の保険加入の有無や、こちらの過失割合の程度に関わらず、事故によって生じる人身損害の補償をしてくれる保険です。
この保険を利用すれば、相手方に自動車保険が付いているときと同じように、その都度、治療費や休業損害を支払ってもらったりすることが出来ます。また、治療終了後、後遺障害の内容に応じた補償や、慰謝料の支払いも受けることができます。
相手方無保険の場合には、人身傷害補償特約(保険)の利用を最もおススメします。この保険のメリットについては、こちらの記事もご参照ください。

 

6 まとめ

特にこちら側に過失がない又は過失が少ない被害事故の場合、加害者にきちんとした責任を負わせたいというご意向はとてもよくわかります。
しかし、相手方が誠実に対応していただけない場合や、資力が乏しい場合は、紛争解決までにかなりの時間と労力を要するほか、上述したとおりの回収不能のリスクがあります。これは、弁護士が代理人についた場合でも同様です。
回収できるものは先に回収しておくという選択肢を取ることが、経済的にも、精神的にも、皆様の被害を回復する最善の手段であると考えております。

相手方が無保険でご不安な場合は、まずはご自身の保険会社の担当者に相談しましょう。そして保険会社がカバーできない部分の対応についてはアステル法律事務所にご相談ください。

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【交通事故一般に関するコラム】

2021/10/27

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Auther :アステル

自転車損害賠償保険について(加入の必要性とメリットとは?)

 

第1 自転車損害賠償保険の義務化とその背景

自転車事故の被害者の経済的な救済の確保と、加害者の経済的負担の軽減を図るため、熊本県では「熊本県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が改正され、自動車損害賠償保険等(以下「自転車保険」といいます。)への加入が令和3年10月1日から義務化されています。

同条例第11条は次のとおり定めています。

「自転車利用者(未成年者を除く。以下この条において同じ。)は、自転車損害賠償保険等(自転車の利用によって他人の生命又は身体を害したときに生じた損害を賠償する責任が発生した場合に、これによる損害を塡補することができるものに限る。以下「自転車損害賠償保険等(生命身体)」という。)に加入しなければならない。ただし、当該自転車利用者以外の者により当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等(生命身体)への加入の措置が講じられているときは、この限りでない。」

「自転車利用者は、自転車損害賠償保険等(自転車の利用によって他人の財産を害したときに生じた損害を賠償する責任が発生した場合に、これによる損害を塡補することができるものに限る。以下「自転車損害賠償保険等(財産)」という。)に加入するよう努めなければならない。ただし、当該自転車利用者以外の者により当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等(財産)への加入の措置が講じられているときは、この限りでない。」

つまり、同条例は、自転車利用者に対して、自転車損害賠償保険等(生命身体)の加入を義務づけ、自転車損害賠償保険等(財産)への加入の努力を求めています。
自転車に乗っている際に歩行者に衝突して、高額な損害賠償請求を命じられる事例が発生していることは、報道等により、ご存知だと思います。

 

第2 自転車損害賠償保険等とは

自転車損害賠償責任保険等とは、以上のように、自転車の利用によって他人の生命・身体・財産を害し、その損害を賠償する責任が発生した場合に、これを補償・填補することができるものです(以下「自転車保険」といいます。)。

 

第3 TSマーク付帯の自転車保険とその補償・填補範囲

自転車保険としては、自転車整備士が点検整備した普通自転車に貼られるTSマークに付帯しているものが知られています。

自転車通学をしているお子様について、学校側が年1回の自転車整備士による点検整備を指導していることも少なくなく、その際、自転車保険も付帯している旨の説明がなされているかもしれません。実際、このTSマークに付帯している自転車保険でも、上記条例の義務づけについては守っていることになります。

しかし、TSマークに付帯している自転車保険の補償・填補の範囲は限定的なものです。すなわち、TSマークに付帯されている自転車保険は、TSマークが貼られた自転車運転中に第三者に死亡又は重度後遺障害(自動車損害賠償保障法の定める等級で1~7級に該当するもの)を負わせたことにより法律上の賠償責任を負った場合に「のみ」、青色TSマークの場合は1000万円、赤色TSマークでは1億円の範囲内で補償・填補をするというものです。自動車損害賠償保障法(厳密にいうと「自動車損害賠償保障法施行令」です。以下、同様です。)の定める後遺障害の等級は、1~14級までありますが、8~14級の後遺障害を負わせた自転車事故は補償・填補の対象ではないのです。

では、TSマーク付帯の自転車保険では補償・填補して貰えない、自動車損害賠償保障法の8級の後遺障害としては、どのようなものがあるでしょうか。
「一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの」
「脊柱に運動障害を残すもの」
「一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの」
「一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの」
「一下肢を五センチメートル以上短縮したもの」
「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」
「一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」
「一上肢に偽関節を残すもの」
「一下肢に偽関節を残すもの」
「一足の足指の全部を失つたもの」
が、8級に該当します。

いかがでしょうか。とても、「軽い」とはいいがたい障害です。過失割合によりますが、数千万円の賠償責任が命じられる可能性もあります。このような自動車損害賠償保障法8級に該当する後遺障害を第三者に負わせる自転車事故をおこしてしまっても、それは、TSマーク付帯の自転車保険の補償・填補の対象とはならないのです。

ちなみに、第三者が負った後遺障害が、自動車損害賠償保障法の一番低い後遺障害等級である14級の場合であったとしても、数百万の損害賠償責任が命じられる事例は決して少なくありません。

また、TSマーク付帯の自転車保険では、「物」に関する損害賠償責任も補償・填補の対象となりません。
つまり、「うちの自転車にはTSマークが付いているから安心」とは、いいきれないのです。

 

第4 保険点検のお勧め

個人賠償責任保険も、自転車事故による賠償責任を負った場合に、これによる損害を補償・填補する内容であれば、前記条例で加入を義務づけられた保険に該当します。個人賠償責任保険には、自動車保険、火災保険、傷害保険の特約となっているものや、クレジットカード等に付帯しているもの、PTA保険として販売されているもの等もあります。同居家族や別居している未婚の子どもがおこした自転車事故も補償・填補の対象となるものもあります。補償・填補対象が重複している複数の保険契約を締結しており、無駄な保険料を支払っている事例もあるともいわれています。

この機会に、自転車事故等をはじめとする事故によって第三者に損害賠償責任を負うことに対する備えが十分といえるか、ご家族で確認されてみてはいかがでしょうか。保険で補償・填補される対象や内容は、商品によってさまざまですので、保険会社に尋ねたりして、約款を確認する必要があります。
なお、業務で自転車を利用中に起こした事故は、個人賠償責任保険では補償・填補されませんので、業務で自転車を利用するときは、事業活動における自転車の利用について補償する保険に加入する必要があります。

 

お困りの際は、アステル法律事務所の交通事故相談をご利用ください。

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2021/01/27

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Auther :アステル

熊本県公安委員会の統計によれば、熊本県内で発生した交通事故発生件数は令和2年11月末までで前年比約23%の減少だったようです。コロナウィルス感染症拡大のための外出が減ったこと等が理由に挙げられそうですが、それでもまだまだ交通事故によってお亡くなりになったり、お怪我をされたりする方がいなくなるわけではありません。

今回は、交通事故が発生したとき、相手方から回収ができない場合に大活躍する「人身傷害補償特約(保険)」について、実際にはどういう形で使えるのかご紹介します。

 

(目次)

1 相手方に請求できないときがある

2 メリット① 手続きの手間が大幅に省ける

3 メリット② 過失割合に左右されない

4 メリット③ 相手が不明、相手がいない場合でも使える

5 メリット④ 車の事故だけに限られない場合も

6 人身傷害補償特約を使った後でも差額を相手に請求できる

 

1 相手方に請求できない・しにくいときに活躍する

交通事故は、いつも相手方加害者がいるわけではありません。車をガードレールなどにぶつけてしまう自損事故を起こしてしまった場合は、請求すべき相手方はいません。

また、ひき逃げに会った場合は、相手方の特定ができないため、「政府補償制度」の利用をせねばならなくなります。

さらに、相手方がいる場合でも、自分の過失割合のほうが大きい場合は相手方任意保険会社が治療費の支払などの対応をしてくれませんし、そもそも相手方が任意保険に加入していない場合もあります。このような場合は、通常、相手方本人が対応しなければ自賠責保険会社に被害者が直接請求をすることになりますが、一旦治療費などを自分で支払い、領収証などを添えて請求することになります。しかも、自賠責保険会社からの支払いは、一定の限度でしか行われません。

このような時、人身傷害補償特約を自動車保険につけていれば、自分が加入している保険会社が損害の補償を行ってくれます。

 

2 メリット① 手続きの手間が大幅に省ける

上記に述べたように、自賠責保険に被害者請求をする必要がある場合は、一旦自分で医療機関などの費用を支払い、治療が終了(症状固定)した時点で、すべての領収証や休業損害の資料などを付けて、自賠責保険会社に請求することになります。

したがって、「一旦医療費を自己負担する必要がある」ことと、「請求資料などを準備して保険会社に送付する」という手続きが必要になります。

また、相手方加害者がひき逃げなどで不明な場合も同様な手続きが必要になります。

このような時、人身傷害補償特約を付けていると、自分が加入している保険会社が、あたかも相手方加害者の任意保険会社のように、医療機関への費用を支払ってくれたり、休業損害や慰謝料の支払いをしてくれます。

つまり、この特約を利用することで、一旦手出しする必要もなく、またその後の自賠責保険への請求手続きをする必要もありません。

 

3 メリット② 過失割合に左右されない

交通事故による損害賠償金額の算定は、相手方とこちらの過失割合に応じた減額がなされます。これは、実際に生じた損害のうち、自分自身の責任で生じた部分は、相手方に賠償させることはできないという「過失相殺」という民法上の考え方です。

したがって、通常、相手方加害者の保険会社から支払いを受けることができる金額は、この過失相殺が行われた後の金額ということになります。

しかし、人身傷害補償特約は、契約者の損害補償を保険契約として約束するものです。したがって、契約者の過失割合による過失相殺をすることなく、保険契約上計算された損害額が支払われます。

つまり、契約者の過失が10割であっても、保険契約上保険会社が算定した損害額は満額支払われる、ということです。

 

4 メリット③ 相手が不明、相手がいない場合でも使える

人身傷害補償特約は、契約者の損害補償をお約束する保険なので、これまでにも記載しているように、仮に自損事故であっても、ひき逃げで相手方が不明であっても利用できます。

 

5 メリット④ 車の事故だけに限られない場合も

保険の補償内容次第になりますが、加入している自動車保険の対象車両の事故だけでなく、歩行中や、自転車などの事故の場合、他人の車に乗っている時の事故の場合でも適用される場合があります。

詳しくは、皆さんがご加入されている自動車保険の担当者さんに確認してください。

 

6 人身傷害補償特約と相手への請求は両立する!?

見落としがちなことですが、人身傷害補償特約の利用と、相手方への損害賠償請求は両立します。

例えば、相手方から賠償される賠償金は、全体の損害金から契約者の過失割合を差し引いた金額となりますが、人身傷害補償特約により算定される契約者の過失割合分を補償してもらうことも可能です(実際の解決内容などの資料を保険会社に送り、算定してもらうことになります)。

また、先に人身傷害補償特約を利用した場合も、自分の保険会社が保険契約上算定した金額と、弁護士が算定した損害賠償金額とに差額があった場合には、不足する金額を相手方に請求することが可能です。

人身傷害補償特約で補償された金額は、先に契約者の過失割合分に充当するというルールが最高裁判所の裁判例として判断されました。これにより、裁判所基準で算定された損害額のうち、契約者の過失割合部分に先に充当することになるのです。

 

まとめ

相手方に任意保険がついていない案件も、年に数回ご相談をお受けします。任意保険に加入していない方の場合、経済力も十分ではない方が多いので、仮に相手方に直接請求するとなると、実際の損害額の回収には、長い時間、大きなコストがかかる可能性が高いといえます。

そのような場合、ご自分の自動車保険の内容を見直すことで、ご自分やご家族に「万が一」があった場合に備えることができるので、必ず人身傷害補償特約の内容を確認しておきましょう。

また、人身傷害補償特約の利用とあわせて、実際に相手方に請求していける場合もあります。「弁護士費用特約」をかけておくことで、弁護士報酬や実費などを保険会社に負担してもらうことができます。

この2点の特約には加入しておくことをお勧めします。

以上

 

 

お困りの際は、弁護士法人アステル法律事務所へご相談ください。→https://www.aster-kotsujiko.net/consultation/

 

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